日本銭湯の様式
銭湯という言葉から、私たちはどのようなものをイメージするでしょうか?
ケロリンの桶やペンキ絵の富士山、一面タイル張りの浴室、類を見ない番台システム…
そういった、銭湯の特徴にスポットを当ててみましょう。
■ケロリンの桶
銭湯にいけば必ずといって良いほどピラミッド型に並べて置いてある
「ケロリン」という黄色いプラスティックの桶はいったいなんなのでしょう?
このケロリン桶は、1963年(昭和38年)に、衛生上の問題から
銭湯をはじめとする公衆浴場で使われる湯桶が木製から合成樹脂製に切り替わることになり、
「ケロリン」の発売元である内外薬品が、広告のために東京温泉という銭湯に卸したのがその始まりです。
「風呂桶を使った広告は、多くの人の目に止まる」という趣旨から作られたこの桶は、瞬く間に全国に広まったのでした。
現在でも年に4〜5万個を納入する、銭湯文化を代表する物の一つになっています。
また、その丈夫さは腰掛として使っても割れないほどであることでも重宝されています。
■ペンキ絵
浴室に入ってすぐ目に入るのは、雄大な富士山を描いたペンキ絵。
銭湯のゆったり感を演出する一助を担うこのペンキ絵の発祥は大正元年に遡るといわれています。
東京都神田の猿楽町にあった「キカイ湯」のご主人が、画家である川越広四郎氏に
男湯に富士山の壁画を描いてくれるよう依頼したのがその始まりであるといわれています。
その後、富士山のペンキ絵は富士山の見える東日本を中心にして広まり、
「銭湯=富士山のペンキ絵」という固定観念にまで昇華されたのです。
しかし、昨今の後継者不足による廃業やスーパー銭湯への鞍替えなどでペンキ絵の需要は減少しつつあり、
ペンキ絵の職人も関東でわずか5名のみという状況下にあります。
ちなみに、ペンキ絵にはタブーとされる題材が幾つかあります。
「(景気が)落ちる」に通じる「夕日」、「(客が)去る」に通じる「猿」、
「散り行く」に通じる「紅葉」などがタブーとされています。
■番台
銭湯の代名詞にして、男の子たちの憧れの一つ、それが番台です。
本来、番台の役割は男湯・女湯に入場してくるお客さんから入浴料を徴収し、
籠に入れられた衣服などが盗まれないよう目を光らせる防犯の役目、つまり「見張り番の台」だったわけです。
しかし、コインロッカーの普及などで、番台を廃止して受付型にする銭湯も増えているそうです。
番台は脱衣所をすみずみまで見渡せて、かつお客さんとお金のやり取りをするのに困らない高さで、
長時間でも疲れないよう足を伸ばせるようになっています。
また、後ろにはお客さんが買うシャンプーなどの洗面用具を並べた棚がおいてある所もあります。
■タイル
ユニットバス全盛になった今の家庭用風呂ではなかなか無いのが、この全面タイル張りの浴室です。
明治時代までの銭湯は、浴槽を含めた浴室が総板張りになっていてそれはそれで風情があったのですが、
木の性質上水を吸って膨らんだり腐ってしまったりと衛生的に宜しいものであったとは言い切れなかったわけです。
大正時代に入ると、衛生面やタイル自体の酸化・アルカリ化し辛い化学的安定性や耐熱・耐水性といった機能性、
欠けた場所だけを取り替えることの出来る利便性などが衛生面から評価され、浴室に使われるようになっていきました。
中には、上記の富士山の壁画をタイルで描いた銭湯もあったそうです。
現在では、銭湯や温泉などの公衆浴場のほとんどにタイルが使われています。
スーパー銭湯
近年増加している新形式の銭湯、それが「スーパー銭湯」です。
健康ランドのような一大リラクゼーション施設でありながら、銭湯のリーズナブルな利用料金を併せ持つスーパー銭湯は、
1994年に名古屋で第一号が開業しそのブームが全国に波及していきました。
健康ランドと大きく違うところは、「入浴料が安い」ことが筆頭に上げられますが、
その分健康ランドで行われているサービスが別料金で提供されているなどのデメリットもあります。
また、健康ランドが仮の宿泊施設として利用できることがあるのに対し
スーパー銭湯ではそういった利用法を目的としていないところがほとんどです。
しかし、銭湯と違い露天風呂やサウナやジャグジー、打たせ湯といった充実した設備を備えているため、
年々人気は上々傾向にあります。
文章素材集 -
銭湯